昨日をもって山形県のとある宿泊施設でのお仕事を終える。わたしの不手際で心配をかけてしまった初日から昨日の終業まで、穏やかにわたしに接してくれたオーナーと仕事仲間。旅の疲れを癒す笑顔とはまさにこのこと。わたしはみんなのやさしい笑顔とただただ眠たげな表情しか見たことがない。どこにも緊張はない、いつもゆるやかな時間が暖炉の煙と共に流れるのが見える。こういう時間があるのだなとわたしはひっそり感じた。こういう時間があっていいのだなと、ちょうど神さまが世界にちいさな島をぽつんとひとつ浮かばせるみたいに、わたしは自分の世界にちいさな灯りを与えることができたのだった。
人に恵まれたとまた思う。仕事柄、いろいろな人に出会うけれど、いっしょに仕事をする人たちと過ごす時間がなにより大切だと感じていた。それは、ゲストより仕事仲間といる時間のほうが長い、そして仕事についてわたしは、職場の人間関係にいちばん価値を感じている。だから、彼ら、彼女らと過ごす時間は大切だ。
わたしは人見知りで無闇に気を遣う人間であるから気疲れしやすい。だから本当は対人を強く要求される仕事は向かないと思っていた。でも、今まで携わってきたサービス業や教育のお仕事のうち、嫌だと思って辞めたものはない。それはすべて仕事仲間のおかげだと思っている。みなさん、本当によく接して下さって有難いです。
わたしはよく可愛がられるけれど、歳をかさねていけばそうは言ってられなくなる。いまのうちに、可愛がってくださる人がいるうちに、わたしは自分なりに成長していけたらなと思う。自立心を遥かに高く掲げたいとさえ思う。
お別れの日、オーナーに一日のまかない代をもらった。本当に人が良すぎると思う、この方は。なんだか、涙が出る。わたしが「行って参ります」と言うと「行ってらっしゃい」と返ってくる。ささやかな挨拶のなかにも豊かなことばがある。わたしの心は遠く春まで駆けていく。オーナーに早く告げたくて。早く知ってほしくて。かならず、帰ってきますって。その気持ちでいっぱいです。
