深夜に目覚めると、チャーリー・ヘイデンのベースがいつにもまして心地よく聴こえる。夜は人をしんみりさせる。そのあいだ、夢はどこかで人を走らせている。
だれかは太陽の知らないところへ、それからきっとそのひと自身でさえ知らないところへ誘われて、次の日こんどはあなたが誘われるかもしれない。このためにはお酒も煙草も必要なくて、愛も真実も必要ない。必死の奔走が雨といっしょに泥土をはじいて、轍には水たまりができて生命の源が発現しているだろう。だけど夢の痕跡は五感のどこに居残ることもなく現実のひかりのなかでたやすく分解される。それでも人は夢のなかで走る、きっといまもどこかで。
未熟なものの思想がそうするように、わたしは同じ環をいつまでもぐるぐるとめぐって、口を開けたまま、星ひとつさえ見えやしないのに空をじっとながめている。それはでも、夜が望むことでもあるから。夜は人をしんみりさせる。それで溶けて消えていってしまう人もいるとか。空をながめていると、わたしもそういう人と同じ気になる。