思えば、安心と不安が日夜のようにあらわれ、わたしもその渦に呑まれたことがあったかもしれない。だけどそのつどわたしの腕を必死の思いでつかみ、わたしを留めさせたのは、わたし自身であった。
わたしはつよい、わたしはつよいと言い聞かせたあの頃にくらべて、いまはなにも言い聞かせることばをもたないで、こころおだやかになったつもりで、しずかに過ごしている。
情動に呑みこまれていたころのことばをいまやもたないわたしは、だれの苦しむこころに語ることができるだろうかと思う。ことばなしに寄り添うことができたらどんなにいいだろうかとわたしは思う。