2026/01/15

1807.

​地下鉄の改札を通ろうとすると、向かいから改札を出る人々がやってくる。向かい側から歩いてくる人が、ふとある人に見えたと同時にその人のことが思い出され、そしてあの人ではぜったいにないんだと確信する。

ある人とは、上京してはじめて知り合った、女性だか男性だかわからない年上の人で、なにをしているのかわからない、いつまでも得体の知れなかったが、それでもわたしのコトバをよくよく褒めてくれたし、となりで胡座をかいていたアメリカ人のきれいな女性に恋している風だった。わたしはその人のご縁で素敵な女優さんに自分で綴った文を朗読してもらったり、音楽もつけてもらって、人生有り難い、今でも忘れられないひとときで、今でも忘れられない、忘れたくない人だった。

忘れられないから、こうして背格好の似ている人を見つけて、あっ、と思ったりするのだろうか。そして、元気にしていますか、って。コトバを綴りましたよ、絵を描きましたよ、って。言いたくて、どうしようもなくなる。

まだ見てくれていますか、いまなにをしていますか、って。

話したくて、地下鉄の天井を見てしまう。